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2018.02.27

Engineering

Research

「コンピューターサイエンスのすべての分野に精通していること」という応募資格に込めた想い

Toru Nishikawa

※PFNの募集要項は、本ブログの内容をふまえ、適切に意図が伝わるよう一部更新しました


PFN代表の西川です。

今回は、SNS上でもたびたび話題(炎上?)になっているPFNの応募資格について、改めてご紹介したいと思います。
PFNの採用募集ページに書かれたリサーチャーの条件には、「コンピュータサイエンスのすべての分野に精通していること」という一文があります。この条件は、PFIの時から、リサーチャーの応募資格として常に掲げてきました。

その背景にある想いは、コンピュータサイエンスの研究をする上では、一つの分野だけでなく、幅広い分野について深い知見を有することが極めて重要である、ということです。たとえば、データベースの研究をする上では、トランザクション処理の理論や関係代数について詳しく知っているだけではなく、データベースを動かすコンピュータアーキテクチャ、ストレージ、また、今では分散データベースが一般的になってきているので、コンピュータネットワークについての知見も持っていることが必要不可欠です。深層学習を研究する上では、いまや、一台のコンピュータを使って実現するだけでは競争力が持てず、効率の良い並列処理が必須です。フレームワークを作る上では、コンピュータアーキテクチャや言語処理系の仕組みを理解していることが不可欠です。ドメイン特化した言語を作るような場面では、プログラミング言語理論についての理解がなければ、建増し建築のような言語が簡単にできてしまいます。強化学習においては、シミュレーションや、レンダリングの技術を洗練させていくことも重要です。

このように、一つの分野を知っているだけではもはや強みを出すことはできない時代になってきています。どのような分野と分野を融合したら新しい技術が生み出されるのか、最初から予見するのは難しいことです。私たちには、最先端の技術を切り拓いていくミッションがあります。そのために、すべての分野へ精通するべく、技術を追求していくことが極めて重要だと考えています。

精通という日本語は、その分野について広い知識や深い理解を持つことを示しています。必ずしも、その分野のトップカンファレンスに論文を出せるということを示しているわけではありません(そのためには、知識や理解だけでなく、新しい研究をするという重要な能力が必要になります。そして、そのような能力を身につけていくことも重要だと思います)。また、すべてを知り尽くしているということを表しているわけでもありません。むしろ、すべてのことを知り尽くしていると言い切れる人は、サイエンティストではないと思います。コンピュータサイエンスは今まさに急速に発展している分野であり、その進化を常に追い求めていくことは、極めて重要な姿勢だと考えています。

時にはSNSなどで「コンピュータサイエンスのすべての分野に」という部分が、誤解されたり、面白おかしく茶化されたりするようなことも散見されますが、この応募資格に込めたメッセージは、依然としてPFNの文化を形成する上では重要なことだと思っており、変えるつもりはありません。しかし、この応募資格について、誤解を生まないような表現を新たに考えていくことも必要だと考えています。

この10年間、コンピュータサイエンスの領域も急速に広がってきています。この流れはさらに加速するでしょう。また、コンピュータサイエンスの枠にとどまらず、様々な分野を融合することによって、新しい研究分野もできてくるでしょう。ですので、次のような要素を加味して考える必要があると思います。

  • 現時点でのコンピュータサイエンスのすべての分野に詳しいということよりも(もちろん広い分野を知っていることは必要ですが)、これから生まれてくる新しい分野、コンピュータサイエンスの発展の動きを吸収することのほうが、今後は重要になることを考え、現時点での知識よりも、学ぶ意欲を重要視します
  • コンピュータサイエンスだけでなく、ソフトウェア工学、ライフサイエンス、機械工学など、他の分野についても理解を深めていくという姿勢を評価します
  • 新しい技術の組み合わせによるイノベーションをおこすため、人工知能分野の専門家だけでなく、多様な専門性を持つメンバーを歓迎します


これまでは、この条件は、リサーチャーのみに適用していました。しかしPFNでは、リサーチャーもエンジニアも、分け隔てなく、一丸となって、新しい技術を切り拓いていくことが重要だと考えています。リサーチャーもエンジニアリング的な素養が必要ですし、エンジニアも研究について理解をしていく必要があります。ですので、リサーチャー・エンジニア関係なく、これを応募資格にしようと考えています。

 

また私は、大切な、すべてのPFNのメンバーが、新しい技術を切り拓くために全力を尽くせる環境を作っていくことも重要だと考えており、それは今後も継続的かつ積極的に取り組んでいきます。

 

PFNでは、多様な専門分野を持った人材を募集しています。興味を持ってくださった方は、ぜひご応募ください。
https://www.preferred-networks.jp/ja/job

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