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2012.07.27

PFIセミナーでテンソルについて話しました

Kenta Oono

Engineer

はじめに

大野です。先日PFIセミナーでテンソルについてお話をしたので、それの宣伝を行いたいと思います。当日の様子は以下のリンクから閲覧できます:PFIセミナー(ustream)。また、スライドはSlideShareで公開しています

PFIセミナーとは毎週木曜日の19:10ごろから行なっている公開社内セミナーです。週替わりで社員が興味を持っている分野について30分から1時間程度でプレゼンを行なっています。内容は技術的な内容(入門からディープなものまで)もありますが、それだけに限らず、契約、組織論、マネジメントなどの話も過去に行ったことがあります。セミナーの様子は録画しており、ustream上でのPFIのページで公開しています。今回自分に順番が回ってきたので、数学の道具の一つであるテンソルをテーマにお話をしました。

セミナーの内容

話した内容は次の通りです

  • テンソルはベクトルや行列を一般化したものです。ベクトルは階数が1, 行列は階数が2のテンソルとみなせます
  • どんな行列も対称行列と歪対称行列に分解できます
  • これと同じ事をテンソルでやろうとしてもそのままはできません、じゃあどうすれば良いか?

今回のお話は数学の分野の一つである表現論では最も古典的なものの一つです。三番目の話をしようとすると、ヤング図形という組合せ論で出てくる対象が自然と現れてきてくる点が面白いのですが、今回はそこまで詳しくは話せませんでした。

テンソルというと仰々しいですが、範囲を絞ればテンソルの実体は単なる多次元配列でしかありません。ただ、それでは行列は単なる2次元の表ですと言ってしまうのと同じで、今回は単なる多次元配列ではないことや、行列ではなくテンソルでなければ嬉しくないことをお話しました。

機械学習の文脈でのテンソルというと、n-mode Product、低ランク近似、Tucker分解などがキーワードとして上がるようです。特に、Tamara G. Kolda氏がこの分野では精力的に研究されていて、この方の論文を追うとテンソル学習のトレンドが分かるのかなと思います。今年のACL(言語処理に関するトップカンファレンスの一つ)の論文などを見ていると、テンソルという言葉が出てきていて、機械学習を超えて自然言語処理の分野でも既に珍しい道具ではないのかなという印象です。

まとめ

今日はPFIセミナーで自分が行ったテンソルについてのお話の概略とその関連に関連する話題を紹介しました。PFIセミナーは毎週行なっているので、興味を持っていただけたら是非、ご覧になって下さい。

余談

2004年にTensorの分解についてのワークショップが開かれました。organizerの中には、前述したKolda氏も含まれています。ワークショップのDiscussion Noteは以下のリンクから入手できます:ワークショップのDiscussion Note

この中ワークショップの中で、次のような問題が未解決問題として挙げられたようです。

9.2.2 Can we decompose a tensor into a sum of a supersymmetric tensor and a nonsupersymmetric tensor?

これは表現論の分野では古典論で既に解決されていて、今回のお話はまさにその特別なバージョンでのお話でした。ある分野では常識的なことだけれど、他の分野では全くそんなことはないとは良く言われますが、この話を聞いてそれを実感しました。

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